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human⇔sky←love? 第5話

冷たい氷…
犯す熱。


冷えた部屋。いつもと変わらない。

そんな中、私は君を招いた。

なぜ、部屋に誘ったのだろう。わからない。君といるとわからないことばかり。

なぜ、抱き締めた。

なぜ、ありがとうと言う。


私の人生においてあり得るはずのなかったモノがここにある。


抱き締められたことも優しい言葉も与えられなかった。
私にとって、ソレは無縁で興味の対象外。興味を持たせてくれない。

知らしてくれない。


それなのに…


部屋に入り、横に立つ男がキョロキョロとしている。


「一人暮らし?凄いね…何もない」


確かに家具は多くない。生活に必要なものだけしか必要がないから。


「あ…もしかして、ここにお招き頂けたのは僕が初めてかな?
うん…嬉しいな。」


不思議だ。
私の部屋に招かれてそんなに嬉しいのだろうか。なにが嬉しいのだろう。


「なにが…嬉しい。」


聞いてみる。きっと教えてくれる…そんな言葉が頭にウロツク。


彼は私を見てニコリと笑うと私の髪に手を伸ばした。


「ん~…なぜ、嬉しいかか。
そうだね…この家の住人が君だからとでも言おうかな。」


分からなかった。

彼が私に興味を持っているのは確かだ。
なぜなら、彼の瞳には私の両親がうつるから。

でも、ナニかが違う。

ナニが違うのだろう。


彼は私の髪から手を放すとまた、部屋をキョロキョロと見始めた。


「あまり、キョロキョロと見るな。」


私の言葉に彼は一瞬、目を丸くする。


「へぇ…恥ずかしいという感情は持ち合わせているのか。」


「礼儀の問題だ。」

そういうと、眼鏡をクイと指で押し上げた。

「なるほど。それは、失礼しました。」

そして、深く頭を下げる。


招き入れたからには、このままキョロキョロさせておくわけにもいかず、
部屋の奥にいれる。


殺風景な部屋にある味気のない小さな木製のテーブル。
その前に彼を座らせた。

椅子はないし、座布団や、
ましてやクッションなどといった洒落たものはここにはない。


固い床の上に座らせたものだから、
客人に対する礼儀がなっていないと嫌味を言われるかとも考えたが、
彼は何も言わずにやはりキョロキョロと部屋を見ていた。


茶をいれようと何もない台所にたつ。


「あぁ、気なんて使わなくていいよ。
そういえば、家族は?このあたりに住んでいるのかい?」


なぜ、そんなことを聞くのかはよく分からなかったが答える。


「いない。」


「そう。」


彼の前に湯飲みを置くと一言だけ返事をしたあと、
いただきますと言って茶をすすった。
それ以上は何も言わないようだ。


「なぜ、学校から連れ出したのかは聞かないんだね。」


彼が湯飲みから口をはなしレンズ越しに見つめてくる。


その瞳にはやはり私の両親がいた。


「知りたいから。だから、君は私を連れ出した。
私も君を知りたいからついてきた。」


「なぜ、そう考える?」


「君の眼には私の両親がいる。」


その言葉に彼が首を傾げる。


「家族はいないんじゃなかったのかい?」


「親はいる。」


「『家族』ではないと?」


「わからない。『家族』とはなんだ。」


「ぷっ…あはは

面白いね、弧蝶は。『家族とはなんだ。』か…僕もその答えを知らないなぁ。」


なにが面白いのか分からない。



「僕は人を信頼しないんだよ。と、いうかできない。
絆とか愛とか優しさとか、そういうものを見たことがないんだ。
親もいるし、これまで友達と名乗る人間とも触れあってきた。
でも、彼らにソレはなかった。全部、嘘ばかりだよ。
だから、家族なんて分からない。家族の定義が一緒に住むことなら話しは別だけど。
人間はどうしてもそこに愛情とか絆とかを求めるみたいだから、
よく分からない。」


「その答えを知りたいのなら、私は教えられない。
きっと、私はそういうものから一番遠い存在だ。」


「弧蝶は考えることしかしないんだろうね。思うことも感じることもしない。
いや、できないのか…。
それが僕にとって美しくて仕方がないんだよ。
君なら、嘘がない、澄んだものを…『本当』を見せてくれる気がする。」


彼がぐぐっとテーブルを越える勢いで
私の顔へ自分の顔を近づけてくる。


その瞳にはやはり両親がうつっていたけれど、
これまで見た、どの人間のものよりも綺麗だった。


「私は愛の与え方も優しさも絆の紡ぎ方も知らない。
君に与えるすべを知らない。」


彼はガックリとするのだろうか。こういうことを突き放すと言うのだろう。


「大丈夫だよ。」


もう一度、ぐっと近づいてきて私の手をとって両手で包んでくる。


「与え方なら僕が教える。
僕は君を求めている。
それは『本当』だ。それを、『恋』だと仮定して僕は一心に君を求めるよ。
君に振り向いて貰えるように全力をつくす。
弧蝶が僕に惹かれたとき、僕からの愛を感じたとき…ソレを僕に教えて欲しい。
弧蝶のやり方でソレを教えて欲しい。」


「だから、私は何も感じないと言っているだろう。」


「僕からの『本当』を受けとるだけでいい。ただ、それだけだよ。」


まったくもって分からなくなってきた。
私はなぜ彼のために何かをしなくてはならないのか。


わからないことが多すぎて、言葉が出てこない。


あぁ、これが『うんざり』か。
いや、『諦め』というのか。


「よし!では、手始めにデートをしよう。
次の日曜日の13時に中央公園の噴水の前で待ち合わせとしよう。
あ、場所わかるかな?
やはり、家まで迎えに来るべきかい?弧蝶の望むままに僕は動くよ。」


キラキラと目を輝かせて、また、近づいてくる。
私の顔にレンズかツカツカとあたる。


「中央公園でいい。」


「中央公園だね。
では、僕はさっそくデートの計画をたてるために情報を集めてくるよ。」


ズズズッと音をたて茶を飲み干すと
「美味しかったよ。では、失礼しました。」と部屋を出ていった。


空になった湯飲みを手にとり、台所に持っていく。


そして、湯飲みを見つめてみる。


何もない部屋と握られていた私の手は、
いつもよりも少しだけ
温かかった。


氷は少しずつ少しずつ…
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小説更新(暗い方)第四話。

耳に擦る風の音

音のない君の足音



僕と彼女は学校を抜け出した。

名も知らない人間の手を握り、転校初日に学校を抜け出すなんてと可笑しく思ったけれど、抵抗も反省も後悔も浮かばない。

ただ、あるのは今、自分と繋がっている人間への興味と…期待。

僕の数歩後ろを僕に引かれる形で走る彼女をチラリと見てみる。

息も少しあがって、顔も赤く染まっているのに、それだけだ。

なぜ、自分が会ったばかりの男に手を引かれているのか。そんな疑問さえ彼女の表情は写さない。

暗いとも思ったが、暗い性格とは思えない。まあ、様子から見て、明るい性格ではなさそうだけど。


性格がない…?


いや、それはないだろう…。


しかし、彼女には何かが欠けている。普通と比べて、何かが違う。『異常』だ。


そして、僕はその『異常』に惹かれた。僕にとって、その『異常』が期待であり、『特別』だった。


ふと思って、足を止める。


「そういえば、学校から連れ出したもののどこに行くか決めてなかった。」

彼女に話しかけても、会話してくれるか分からないので、とりあえず独り言のように言ってみる。

彼女の様子を見てみたけど、うつ向いている。長い前髪が顔にかかって全く表情が見れない。
さっきから表情はないけれど。


案の定、会話をしてくれそうにないので、独り言を続ける。


「僕の家に行ってもいいんだけど…父さんがまた怒るな。外は風が寒い。彼女の家に招いていただけたらいいんだけど、名前も知らない男を家にいれるのは無理だろう。」


もう一度、チラリと彼女を見てみる。僕の独り言をまったく気にかけていない。

やっぱり、違う。あのクラスの人間とも、これまで出会った人間とも…違う。


もし、彼女が彼女でなかったら、きっと僕の独り言を独り言だととらえない。

「じゃあ、店でも行く?」とか、「じゃあ、なんで連れてきたの?!」とか、返事してくるはずだ。

それなのに、彼女は僕の言葉を独り言だととらえている。たぶん、聞こえてはいるはずだ。さっき、彼女が一言だけ声を出した。耳が悪いわけじゃないんだろう。


じゃあ…問いかけようか?そうすれば彼女は問いかけられているととらえるのだろうか。


問いかけても、返事が来なかったなら僕はただ単に嫌われているんだろう。または、過度の人見知りかな。


「どうしようか?君はどうしたい?」


答えるか…


彼女はうつ向いたまま。なんの様子も変わらない。


風が優しく吹き抜けた。彼女の長い前髪を揺らす。


彼女がグッと僕の手を引いて歩き出した。手を引く力が意外にも力強くて少し驚く。


ズンズンと進む彼女に引っ張られて歩く。


後ろ姿が綺麗だななんて思う。何にも支配されず、自分にも支配されず。きっと、自分でも自分を掴めていないんだろうなとなんとなく思う。

自分を追っているのかななんて。


「どこにいくの?」


「………家。」


消え入りそうなのにそのくせ、耳になぜかよく届く声。
感情も抑揚もない。ただの呟きがその声が心にコトンッと音を立てるように、
落ちてくる。



「家…いってもいいの?」


聞いたけれど、返事は来なかった。
ズンズンと僕を引っ張る彼女を肯定の意味だと勝手に解釈する。



なんとなく握られている手に意識が集中する。
彼女の手は冷たくて本当に生きているのかと生を確かめたくなるほどだった。
それなのに、それなのに…なぜだろうか。


…温かい。そう、感じた。



『異常』で『特別』な彼女に抱いたのは…『ナニ』?



温かいなんて人に感じた経験がなかった。
やっぱり、『本当』なのだと確信した。
自分の全てが自分の前に歩く彼女を求めた。



前を歩く細い背中に抱きつく。
急に抱きついてしまったものだから、驚くか拒否されるかとも思ったけど、
彼女はビクリともしなかった。



「君の名前が知れればいいのに。」



また、独り言をつぶやく。
きっと、問いかけていないから彼女は答えない。



僕の腕の中の彼女はやはり何も答えなかった。



「悪かったね。急に抱きついて。」



彼女の冷たい体温を奪うようにそっと彼女を開放する。
解放したとたん彼女がまた僕の手をとって歩き出した。



「……孤蝶。」

彼女が小さく言葉を落とす。

「え…?」

「孤蝶。」

あぁ、名前か。
なぜ、教えてくれたのか分からなかった。
そして、彼女の名前を知れたということに少し喜びを感じる自分も分からなかった。


『ありがとう。』


分からない。それなのに、なんで、こんなに温かいのだろう…。


すぅっと吹き抜ける風は何も教えずにただただ、彼女の髪を揺らして、
僕の頬を濡らしてゆく。
僕もあの嘘つきたちと変わらないのかもしれない。
分からないものを温かいと感じるなんて。
自分を馬鹿にして笑ってみる。


僕は知りたがりのフリでもしたくなったのかな……




耳を擦る風の音
音のない君の足音

鳴り響く胸の声。

小説(暗い方)第三話。

君が私に触れた

それが、再開の始まり・・・



廊下の向こうからキョロキョロと教室を見回りながら歩く見慣れない男。いや、見慣れないこともない・・・ずっと前、そう、思い出せない思い出の中に彼はいる。

皆が私を避けるなか彼は私にただ一人近づいてきた。

そして、私を

『綺麗だ』という。

その眼は、その口は、その表情はただ一心に私を求めている。私の髪に触れる手はゆっくりと髪をとく。

それは私にとって、見知らぬモノだった。彼が異質でたまらない。

異質で不幸な私が言うべきことでもないが。

彼の瞳に私の奥にいるあの男が写る。

あの男だけじゃない・・・私という結果を残したあの女も。

感情など捨てた。

しかし、考えたことがある。それは、結果の私がずうずしくも考えた実験とでも言おう。

もう一度言う、『感情など捨てた』

しかし、どうだろう。『結果』と言えど私も『人間』だ。『捨てきる』ことなどできるのだろうか・・・

こんな私も深層心理のいや、深層心理があるのかも分からない・・・。

ないに等しい私でも本当は感情をまだひた隠しにしているのかもしれない。

そう・・・考えたことがあった。ずっと、昔。


しかし、今、胸にあるモノはなんであろう。

目の前の彼の瞳に写る、私の奥の彼らにナニを思う・・・?


正直にいう。ナニも感じない。


あぁ・・・私はやはり感情がないのだな。と改めて自分を手にする。

そんな結果に対しても知れて嬉しいとか、感情がないことを知り悲しいとかも感じないあたり、やはり感情はないらしい。


私よりも幾分か上にあるレンズ越しの眼をもう一度見る。

彼は私を見て『本当』だと言う。

彼には私がなんと見えるのだろうか。


髪をとく彼の手にそっと触れてみる。

暖かくもなく、冷たくもない体温。耳を澄ませば脈の音が鮮明に聞こえるほどの薄い皮膚。

周りで怯える皆と変わらない人間。

変わらないのに、なぜ異質だと感じるのか。

私は感情もそれに伴う表情もないものの、あの父親の実験のなかで完全な結果になるために他の子供以上の勉強をしてきた。自惚れなど持ち合わせていないが、他に比べれば遥かに頭はいいはずだ。私の中にはたくさんの知識と情報がある。

だから、大抵のことはその知識と情報で解決できる。


それなのに、なぜだろう・・・『彼』が分からない。彼の考えも行動の意味も検討がつかない。

ふいに思う。

私は彼に興味を抱いているのだろうか。
あぁ、きっと興味を抱いたのだ。興味とは感情か?
分からない分からない。
こんなに分からないのはどうしてだろう・・・

感情とは友か?恋か?
興味とは友か?恋か?
私は目の前の彼に友にでもなってほしいと望んでいるのか?
私は目の前の彼に恋人になってほしいのか?


分からない。知らない。なぜ?


初めてかもしれない。人に興味を持つなど。
自分にも向いたことがない興味が今、目の前の異質な男に注がれている。

知りたい・・・それは、あの実験を行った男と女から受け継いだ研究心か、人の本能か。


「・・・知りたい。『君』を知りたい。」


つい、口に出た。周りが少しばかりざわつく。
なんたって、この学校に来てから初めて口を開いたのだから。


君を見つめる。君はニッコリと笑って頷いた。人間の顔がこんなに眩しく写った記憶はない。あぁ・・・君は私の知らない知識と情報の集まりだ。

これは・・・純粋な興味。
感情ではない。友でも恋でもない。
ただの興味。
知らないものを見て、触れたくなるそんな衝動。
公園で遊ぶ子供が初めて土に触れたように、初めて蝶を捕まえたように。

どちらともなく、掴んだ、掴まれた手を引く。
そして、そっと走る。
これは、『ただの興味』

その日、君と出会ったその日、私と君は学校を抜け出した。

ただ、お互いを知る必要を感じたから。きっと・・・『それだけ』





知りたい・・・。


教えてあげるよ。
だから、私にも、僕にも知らせてよ。

小説、第二話。(暗い方です(._.))

厚いレンズ越し

見えるのはいつもと違う世界…



眼鏡を買い替えた。

最近、また、視力が落ちた。

年々…いや、半年ごとくらいに厚くなる眼鏡のレンズ。そろそろ鼻が重い。

母に今日のためにと買ってもらった眼鏡を気にして何度も鼻に手をやりながら、教室の前のドアに立つ。

少し緊張する。


一週間前、両親の口から唐突に伝えられた転校の話。

父の仕事の都合上、転校には慣れていたし、特に驚きもしなかった。

友達もいたけど、別に信頼を寄せてるわけでもなかった。

好きな女子なんていなかったし、寂しさもない。

今、僕は高2で前の学校では高1の一年間、過ごしたけれど、変化なく流れる毎日…

思い出なんてない。

学校を離れる時、僕を送り出す会を開いてくれた。皆は泣いていたけど、泣くほどの絆なんて持った覚えはなく、僕は心の中でひっそり笑った。

きっと僕は冷めているんだと思う。いや、冷めてる。


否定はしない。


冷めた人だねと言われれば、そうですと何くわぬ顔で答える。


そして、


君たちは僕以上に冷めた人間だねと言う。



あのお別れ会の涙も笑顔も別れを惜しむ言葉も僕を勇気づけようと肩を抱く腕も、冷たい。

皆、僕を餌に暖かい自分達を演出したいのだろう。

彼らには『本当』がない。

だから、信用なんてしない。好きになんてならない。

きっと、この世に『本当』を持つ人なんていないだろう…。皆、嘘ばかりだ。


そうして、そんな人間たちに送り出され、また、そんな人間しかいない場所にたどり着く。


もう一度、眼鏡を上げる。


また、今日から変化ない毎日を送るんだ。これまでのように、嘘ばかりの人間たちの喜ぶ笑顔と言葉を振り撒いて、生きるのだ。


教室では担任が転校生が来ると説明している。生徒達はザワついて、僕のいる廊下を覗こうと首を伸ばす。

あぁ…どこも変わらない。

教室のドアがガラッと音を立てて開く。担任が僕を呼ぶ声がする。

ざわめきが最高潮のところにゆっくりと足を踏み出す。

そして、また、僕も嘘つき達に嘘をつく。

嘘つき達が大好きな笑顔と恥じらいを含めた顔で名前を言い、宜しくお願いしますと言う。


そのあとは、でしゃばりもせず、だからといって黙り込むわけでもなく、愛想のいい転校生を演じる。

そうすれば、周りの人間も愛想よく、優しいクラスメートを演じる。

まだ、一日も一緒にいないのにクラスの人間の愚痴をこぼす奴や、好きな女がいるだの、いないだの話しかけてくる奴もいた。

これだから、人間なんて信用できないんだ。

別に愚痴を言うこととか、
好きな女の話しをすることが信用ならないなんて野暮なことは言わない。

それが楽しくて仕方ない年頃なのだろう。

ただ、やっぱり『本当』なんてない。
一日もたたないうちに信頼なんて築けるのか?

お前を信頼してるから、誰にも言わないでくれとか言うけど、
『本当』なわけない。

嫌いな奴も好きな女も本当は嫌いじゃないし、本当は好きじゃないんだ。

嫌いとか好きとか信頼とかただのスパイスでしかない。

自分を際立たせるためのスパイス、演出。

こんな僕もスパイス。


どこにいたって『本当』には出会えない。


こんなに求めているのに。



休み時間になり、嘘の集まりにも疲れて教室から逃げ出した。
廊下をとぼとぼと行く宛もなく歩く。

転校生の僕を珍しがってジロジロと廊下にいる人間たちが見てくる。まあ、これも高校生活を楽しく見せるための演出にすぎないので、いい気分にも悪い気分にもならない。


しばらく、どんな部屋があるのかとか、
さして興味もないものに興味を持つふりなんかして廊下を歩いた。



まさか、ソレを見つけられるだなんて。



次の授業まではまだ時間があるというのにシーンと静まりかえった廊下。
いや、静まり返ってるんじゃない…そんな静かなものじゃない。

僕とソレ以外の人間は廊下の壁に張り付くかのように立って、
自分は死んでいます。と何もかもを失いました。と言うようにうつ向いている。


あぁ…皆、ソレに怯えているんだ…。


僕は皆が怯えるソレに近づく。僕の行動に皆が少しだけざわめく。
僕に注意を促しているのだろう。近づいてはいけないと。

でも、近づけずにいれなかった。

本気で求めていたものが目の前にある。



「『本当』だ…」



ソレの前に立ち、呟いた。



ソレは僕の目の前に立ち見上げてくる。なんの感情も写さない闇のような無しかない黒の瞳を向けてくる。

僕は少しずれていた眼鏡を上げ、レンズ越しに見つめ返す。

そして、瞳と同じ色を写す、ソレの長い髪に手を伸ばし、指に絡める。


そうして、もう一度口を開く…



「綺麗だ…君は、綺麗だ。」






美しいソレは…『本当』

小説②(題名は未定です) ★注意:暗い話です。結構、精神的にえらくなります(笑)★

君を見つけたら殺そう。

君は私の邪魔ばかりするから…




今日も私の周りには誰もいない。誰も近づかないし、誰にも近づかない。

私に近づけば、私のようになるから。

私がその場からいなくなると、その場にいた人間皆がザワザワと動き出す。餌を見つけた蟻の群れのように私の机やロッカーにザワザワと。
私は何も知らないような顔をして、廊下を歩く。何も知らないように、不幸しか知らないかのように…。

暗くて、幸せなど知らなくて、暖かさなど触れたこともないように、彼女には世界の不幸全部がつきまとっているのではないかというほどに、哀れみも抱かせないほどに。

まるで彼女自身が不幸そのもののように。誰かが彼女に不幸をもたらしたのではない、彼女は不幸そのもので悪いのは彼女。近づけば、不幸になる。そんな考えを誰もが抱くような、そんな空気を引き連れて彼女は歩く。

廊下が静まりかえって、皆が彼女に視線を注ぎ、警戒し、願う。あぁ、お願いします。どうか、自分に話しかけないで、どうか、自分に触れないで…と。


こんなふうになったのはいつからだろう。もう、思い出せない。思い出したくない。

そもそも、私に不幸がなかったことがあったのだろうか。


物心ついたころ…そのころもやはり不幸だった。物心ついたなんて言えない。そのころの私に心などあっただろうか。

空っぽの血も肉もない、子供が握った泥人形のように空っぽで、嬉しさとか悲しみとかそんなもの感じなかったような気がする。

感じることを拒んだ。

そうだ、拒んだのだ。

私は両親の愛など知らない。そんなことを言って強がりたい年頃だとか、そんなものじゃない。事実で、それ以外の事実は私に用意されていなかった。


まず、両親同士に愛などなかった。

私は『実験の結果』だった。

愛の明かしとか、そんなものではなかった。

私の両親は普通じゃない。異常であり、天才だった。

そんな異常で天才な両親達は異常に天才に運命的に出会った。

恋心なんてなかっただろう。
あるのは自分と同じ天才への興味と自分という天才への可能性。

二人は天才。全てが完璧だった。

頭も容姿も運動能力も全てがはるかに常人よりも高い。

そんな二人がただ一つ違ったのは、男であり、女であることだった。

その違いは完璧な二人にとってとても興味深いものだった。

そして、そんな二人の両親も兄弟も友人も皆が二人の可能性に興味を覚えた。

『天才と天才からはナニが生まれるのだろう』

皆が考えた。

『天才と天才からはさらに天才が生まれる』のではないかと期待した。

そして、私の両親達は『実験』をした。

愛もそこから生まれる快感もない、機械的に生み出すためだけの行為を行った。

そして、私という『結果』が生まれた。

私が生まれたとき、誰も喜ばなかっただろう。

生まれたばかりの『結果』はまだ完全な『結果』ではなかった。

愛のない両親から生まれた私も、赤ん坊で、そこに常人の赤ん坊との違いは見い出せなかった。

皆はガッカリした。天才と天才から生まれるナニかは生まれた瞬間から異常で天才でなければいけなかったらしい。

最初の私の不幸だった。

しかも、私の出産により実験を行った女…私の母は突然命を落とした。

皆は悲しみにくれ、命を奪った赤ん坊の私を恨んだ。

こうして、私は生まれてすぐに『不幸』となった。

皆、私を抱き上げなどしなかった。生まれたばかりの裸の私を冷たく、突き放すように、遠ざけるように睨んだ。

お前は『不幸』だ。と、『不幸』とはお前だ。と…


そんな中、一人だけ私の誕生を喜んだ異常者がいた。それが実験を行った男…私の父だった。

皆が私を避けるなか、彼は私を引き取り、育てると申し出た。

それは、愛がゆえでも実験者としての結果への責任からでもなかった。

異常で天才な彼だけが実験は続いていると感じたのかもしれない。

育つうちに『本当の結果』が見れるかもしれないと。

または、生まれてすぐに母を殺し、人々に恨まれ、不幸になる異常な私に彼は『天才』を感じたのかもしれない。

そうして、新たな実験が始まった。

父は私を育てるという実験をし始めた。

注ぐのは、子への愛ではなく、実験への熱意。


私は実験されるものとして、結果になるためにあらゆる事を学ばされ、計算された生活を送った。

容姿は両親のものを受け継ぎ言うことなしだった。


父は愛がないからといって私に暴力を振るったり、暴言を言ったりはしない。

ちゃんと衣食住は与えるし、服や小物などは一般的な子供に与える以上のものを与えてくれた。

その代わりに、

優しい言葉や叱りの言葉などは言わない。抱き締めたり、頭を撫でたりもしない。微笑みも視線もくれない。

父は私を『実験途中のもの』としか見ていなかった。

感情などないもののように共に過ごした。

その証しに父は部屋に女を連れ込み、私の目の前で何もいないかのようにSEXをしたし、何をしていても私を瞳に写すことはなかった。

無視ではない。家具のようにあっても気にする必要のないようなもののように扱った。

私は、感情を捨てた。いや、持つ意味を見い出せなかった。

感じるものを与えられなかった。

だから、感じる機関など必要なかった。

感情を捨て、不幸を受け入れた。

私と不幸は二つで一つで、実験の結果だと思った。


こうやって過ごすうちに父は新しい興味の対象を見つけたらしく、実験を放棄した。

異常で天才な父が初めて放棄した実験は『私』だった。

…私は、知っていた。

父が実験を途中で放棄するわけがないことを。なぜなら、父は異常で天才だから。

きっと、感情を捨て、『本当の結果』となりそうな私に、気味悪くなったのだろう。

父には『本当の結果』が見えていた。

そして、結果を出すのが怖くなった。

しかし、不幸にもまだ実験は続いた。私は一人でも結果に近づいていった。私にも『本当の結果』が見えていた。

それ以外に結果はなく、それしかなかった。

私が生きる限り、実験は続く…




『天才+天才=不幸』
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